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生活保護利用者に「耐えがたい苦痛や不利益を与えた」と謝罪した群馬県桐生市の荒木恵司市長(立っている人のうち一番左)=2025年3月、桐生市役所

記者コラム「多事奏論」 編集委員・清川卓史

 困窮した人々に対する行政の冷酷さ。生活保護窓口の深い闇をのぞきこんだような思いがした。利用者や市民らから寄せられた数々の証言は、読み進めるのがつらくなるような内容だった。

 「家計簿が1円でも合わないと怒鳴られた。眼鏡を購入した際に『これは税金ですよ』と怒鳴られた」(利用者)

 「担当職員が窓口の男女に『てめぇら』『ふざけんじゃねーぞ』『さっさと仕事しろや』などと大声で怒鳴りつけている場面をみた」(市民)

 約10年間で生活保護利用者が半減した群馬県桐生市。市の生活保護行政を検証してきた第三者委員会は、広く一般から情報を募り、100件を超す証言の概要を3月に公表した。

 生活保護は生存権を守る「最後の安全網」と呼ばれる。数々の証言が事実なら、「安全網」どころか、制度が利用者を追い詰めていたことになる。

 利用者の訴えに耳を傾け、同市の深い闇に最初に光をあてたのは、24年3月に急逝した司法書士の仲道宗弘さんだった。仲道さんは、生活保護費を1日1千円ずつ窓口で渡し、その合計額はその月に支給すべき最低生活費を下回る「分割・満額不支給」問題で市を追及。実態解明への道を開いた。

 市第三者委は3月、荒木恵司市長に「生活保護法違反」などを指摘した報告書を提出。荒木市長は「申請権の侵害」を認めた。市長は第三者委の提言を受け入れ、窓口相談の録音、利用者の苦情を受け付ける窓口設置といった対応をとる、と述べた。

 これらの再発防止策は相当に踏み込んだ対応であり、評価できる。特に窓口相談の録音は違法・不当な窓口対応の防止に効果があるだろう。実際の運用がどうなるか、注目している。

 ただ考えてみれば、プライバ…

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